匿名組合の法的性格


匿名組合とは、商法第535条において「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」と規定されています。

簡単に言うと、出資者が営業者にお金を預けて、営業者がそのお金を運営して、儲けを分配しましょうという契約になります。

ファンドスキーム(主にGK-TKスキーム)での利用だと営業者は器にすぎないので、儲けのほぼすべてを出資者に分配することができます。

 

匿名組合は営業者と出資者に限られ、民法上の組合のように3名以上の当事者は認められていません。

ただし、多数の出資者を募ることができないということではなく、複数の出資者となる場合には、匿名組合契約を各出資者と結ぶことになります。

その場合、出資者と同じ数の匿名組合契約が存在することになります。

匿名組合員間では、通常、法律関係は存在しません。

匿名組合は、利益の分配だけでなく、損失についても、商法538条に「出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。」と規定されており、損失は出資額の範囲内で組合員が負担することになります。

会計上は出資を超える損失を分配することは可能とされているようですが、税務上、出資を超えた損失は損金とならないので、一時的に営業者に出資を超えた損失を負担させる等、会計と税務を一致させることが多いように思います。

出資を超えた損失についての会計税務上の取り扱いは、「匿名組合に出資した金額を超える損失分配があった場合の会計・税務の取り扱い」というページに記載しておりますので、ご参照ください。

 

商法536条において、匿名組合員は契約に定められた出資義務を負い、その出資財産はすべて営業者に帰属すると規定されているため、組合財産は組合員の共有財産とはならず、営業者の名義の財産となります。

匿名組合が対外的に事業を営む際には、営業者の名義により取引を行うことになり、匿名組合員である出資者は、対外的に表に出てくることはありません。

ただ、「匿名組合」と呼称されていますが、匿名という名だからといって、出資者の名義を対外的に秘密にしなければいけないということではありません。

 

匿名組合における計算として、貸借対照表の作成について、条文上は明確な規定はありませんが、営業者固有の財産と混同するのを防ぐため、損益分配を計算する際に、会計・税法の要請により、複式簿記による記帳が必要になる場合がほとんどのため、必然的に貸借対照表、損益計算書の作成が求められることになります。

損益分配については、法律的には、契約によって自由に定められるものとされているようですが、会計・税法の観点から、出資割合に見合っていない損益分配は、経済合理性を欠くことから、否認されるおそれがあります。

GK-TKスキームにおいて、GK(営業者)は空の器となることがほとんどであり、均等割等のGKの維持費用を払うためだけに、営業者の報酬を年間10万円ぐらいの低廉な固定報酬としていることが多いのですが、いまのところ、税務当局から経済合理性がないという理由で否認された事例はないと思います。

 

匿名組合員の会計・税務処理については、「匿名組合に出資した者の会計処理と税務処理」というページに記載しておりますので、ご参照ください。