特定目的会社(TMK)の配当の取り扱い


特定目的会社は略されて、TMKと呼ばれることが多いです。

SPCが「特別目的会社」と訳されるので、日本語だと紛らわしいため、略式名称で呼ばれるのだと思われます。

TMKは、一定要件を満たせば、配当を損金算入することができるため、二重課税の回避ができることになります。(租税特別措置法第67条の14

一定の要件とは、主に以下の3つになります。

1,資産流動化計画において、発行した優先出資及び基準特定出資(利益配当及び残余財産分配のいずれも放棄する旨が資産流動化計画に明記されたもの以外の特定出資)に係るそれぞれの募集及び割当の50%超を国内において行う旨の記載があること

2,発行する特定社債の全てを機関投資家等が保有することが見込まれること

3,一事業年度に係る利益の配当の支払額が当該事業年度の配当可能利益の額として政令で定める額の90%に相当する金額を超えていること

 

注意しなければならないのは、上記3で、利益配当の支払額が配当可能所得金額の90%超であることを求めるものであることです。

利益配当の支払額は、会計上の利益で算出される金額であり、配当可能所得の金額は、税務上の所得に一定の調整を加えた金額となるため、会計と税務が乖離した場合には、実務上、大きな問題となります。

会計と税務が大きく乖離する場合(例えば減損損失を計上する場合)には、会計上では減損損失は費用計上されるため利益配当の限度額は小さくなるのに対し、税務上では減損損失は加算調整されるため課税所得は大幅に膨らみます。

そのため、支払配当の割合が90%を満たさなくなることが起こりえてしまい、配当が損金算入できなくなってしまい、スキームの破綻を招いてしまうことがあります。

ファンドの性質上、利益のほとんどを配当することを想定しているため、配当可能利益の90%超を配当するという要件は容易のように思われるかもしれませんが、損金算入を税務当局から否認されてしまったような場合にも、条件を満たすことができなくなるというリスクがあります。

そのため、最悪の場合、配当が損金算入できなくなるということが起こりえるため、GK-TKスキームよりも、会計処理には、十分に配慮する必要があります。

ちなみにTMKの配当は、二重課税回避のために特別に認められた配当のため、通常の配当とは異なり、投資家側では、配当益金不算入や配当控除の適用は受けられません。

 

TMKは、資産流動化計画や届出等を作成しなければならずGK-TKスキームよりも手間がかかり、資産の組替えがしにくいなど柔軟性に劣ることから、SPCとして利用されることが少なくなっています。

しかしながら、社債を発行できたり、不動産を現物で投資対象にできることから、不動産信託を利用しにくい開発型の不動産ではTMKを採用するメリットはあると思われます。

また、会計監査が必須になっていることなど、ガバナンスがGK-TKスキームよりも厳格のため、ガバナンスを重視するような海外の投資家がTMKを利用することが多いように思います。

 

TMKでは、税務にも配慮できないと、スキーム自体に大きな影響を与えてしまうため、実務経験のない監査人が監査を行うと税務リスクが生じてしまうおそれがあります。

弊事務所では、TMKの税務にも精通しておりますので、TMKの会計税務の疑問点等あれば、お問合せいただけると幸いです。