不動産信託と不動産特定共同事業法(不特法)


SPC(ファンド)で、不動産を扱う場合、SPCではGK-TKスキームが多いせいか、不動産を信託することが多いです。

不動産の信託とは、委託者が不動産を受託者(主に、信託銀行)に移転させ、受託者が不動産の管理や処分を行わせるという制度です。

受託者は、不動産の所有者の地位に立って、委託者から、信託報酬(管理料等)をもらって、不動産の管理や処分等を行うことになります。

管理料といっても、現物の不動産の管理はPM(プロパティマネジメント)会社が行っているので、所有の代行料という感じでしょうか。

なぜ、SPCでは、信託報酬を払って、いちいち信託という制度を利用するのかというと、実物の不動産からの収益を投資家等に分配するには、不動産特定共同事業法(通称、不特法)という法律の適用を受けることになり、SPCでは、現物の不動産を所有し、不動産から生じた収益を投資家に分配することが規制されているためです。

そこで、不動産を信託することによって、不動産から得られる収益を受益権化(有価証券化)することにより、不特法の適用外となることから、SPCでは、不動産を信託することが多くなるということになります。

ちなみに、不動産の受益権は、法律上は、有価証券の取り扱いとなりますが、不動産の受益権の購入をした場合、会計税務上、現物の不動産を取得したものとほぼ同様の取り扱いとなります。

 

一応、2013年に不特法の改正が行われ、一定条件を満たせば、SPCでも不特法の利用が可能となりましたが、元々、受益権化するという抜け道があったため、SPCでの不特法の利用は、あんまり流行っていないのかなという印象です。

 

他に、不動産を信託するメリットとして、不動産流通税(不動産取得税や登録免許税等)の軽減措置があり、不動産の売却を想定している場合、現物よりも低コストとなります。

また、受託者を信託銀行とすることにより、信託銀行が不動産の所有者となるため、信託銀行ならではの不動産売買のノウハウによって、不動産の処分能力が期待できるということもあるようです。

 

SPCでは、不動産は、信託を利用することが多く、あまり流行っていない感じがする不特法ですが、ネットでの不動産の小口化商品やクラウドファンディングの高まりなどにより、年々改正が行われ、環境整備がされたおかげで、不特法による取引は拡大しているように思われます。

不動産特定共同事業法による事業(小規模以外)を行うためには、会社の財務状態の健全性の担保及び投資家保護のため、会計監査が必要で、弊事務所でも不特法による会計監査を提供しております。

 

不特法による会計監査については、「不動産特定共同事業法(不特法)と会計監査」のページに記載しておりますので、ご参考ください。