LPS(投資事業有限責任組合)の源泉徴収


LPSは、組合事業の損益は、組合員に帰属するものとして課税される(パススルー課税)ため、現実に現金等による分配を受けない場合であっても、組合事業の損益は組合員の事業年度の損益に計上されることになります。(法人税基本通達14-1-1

したがって、LPSから現金による分配がなされたとしても、実態として資金移動に過ぎませんので、当該分配には源泉税が課されることはありません。

LPSに出資した側の会計処理については、「LPSに出資した者の会計処理と税務処理」のページに記載しておりますので、そちらをご参照ください。)

 

個人の税理士や弁護士等の報酬には源泉税がかかることになりますが、LPSのような組合に請求する場合、源泉徴収が必要になるかどうか意外と疑問だったりします。

LPSのような組合は、各組合員にそれぞれの持ち分割合にて、資産負債・損益が帰属することになりますので、組合は、当事者とはならず、各組合員毎に源泉税の納税義務者の判定が必要となります。

法律論だけでいうと、組合員が源泉徴収義務者でない場合は、その分を考慮して、源泉税を納める必要がでてきます。

個人がたくさんいる組合は、源泉納税義務者の判定や納税額の計算が物凄く面倒なことになります。

請求は組合にされることになりますし、組合の預金からの支払となり、各組合員がそれぞれ源泉税を払うなんていうことはありえないので、組合が代表して全額支払うことにならざるを得ません。

そのため、実務上、組合員が源泉徴収義務者かどうかをいちいち判定するのは面倒なので、組合員全員源泉徴収義務者とみなして、源泉税をとるという方が事務処理上簡便です。

税務当局側も払っていれば、文句は言わないでしょということです。

納期の特例の届出は組合名義で提出できますので、納期の特例自体は使えたりします。

制度の欠陥だと思うのですが。。。

 

また、LPSの組合員が、国、地方公共団体等の法人税の支払対象者でない場合非居住者等(非居住者または外国法人)の場合には、源泉税について注意が必要になります。

最近では、官民ファンド等、LPSに国や地方公共団体等の法人税の支払対象でない団体が組合員となるケースがあり、LPSを通じてベンチャー企業に出資したり、メガソーラーなどの再生可能エネルギー事業の匿名組合に出資したりするケースがあります。

ベンチャー企業や匿名組合からの配当や利益に係る現金分配をLPSが受け取る場合には、通常、源泉税が差し引かれてLPSが配当等を受け取りますが、組合員に国や地方公共団体等の法人税の支払い対象外の団体が存在すれば、源泉税は、その組合員の源泉税分を考慮して源泉徴収を行なう必要があり、またLPSも当該組合員の源泉税を考慮して、各組合員の持分計算を行う必要があります

そのため、LPSでは、法人税の支払対象者でない者が組合員だった場合、組合員の各持分計算を源泉税を考慮して計算しなければならず、複雑になります。

出資先が源泉税の調整をできればよいですが、調整できない場合には、組合員が直接、管轄の税務署に還付請求をすることになります。

 

組合員が非居住者等(非居住者または外国法人)で恒久的施設を有する場合、20%の源泉徴収が必要になります。

例えば、LPSが社債を取得して、利子を受け取る場合に、組合員が非居住者等であった場合には、源泉税が課されることになりますので、組合員に非居住者等が存在する場合には、LPSの取引内容によって、源泉税の検討が必要となってきます。
但し、一定の要件を充たした非居住者等の組合員は、所轄税務署長より免除証明書の交付を受けることで源泉徴収は免除されます。