匿名組合において、会計と税務の処理に相違がある場合の取り扱い(GK-TKスキームの場合)


一般的な匿名組合契約においては、「一般に公正妥当と認められる会計原則が税法に定められる会計処理の方法と相違する場合には、税法に定める会計基準を適用するものとする。」という税法優先条項が記載されていることが多いかと思われます。

しかしながら、上場企業が匿名組合に出資しており、匿名組合が連結対象となるような場合には、企業会計に準拠した匿名組合決算書を求められる場合があります。(匿名組合が連結対象となるかどうかの判定については、SPC(ファンド)の連結範囲」というページに記載しておりますので、ご参照ください。)

会計と税務の相違は、具体的には、不動産であれば、減損の計上、太陽光のような再生可能エネルギーであれば、資産除去債務の計上などが挙げられます。

 

そもそも匿名組合契約において、税法優先条項があるのは、匿名組合の損益分配が益金・損金に算入できると規定されており、GK-TKスキームにおいて、会計と税務の利益と所得が相違してしまうと、導管性(二重課税の回避)が損なわれてしまうためです。

つまりは、損益分配が会計と税務で相違してしまうと、余計な税金がかかってしまう上に、営業者(GK)に利益が残ってしまうことになり、事業の利益の一部が投資家に還元できなくなってしまうということになります。

 

このような場合、実務上、以下3つの方法が考えられるかと思われます。

1,決算書を2つ作成する

匿名組合員に報告するために作成した匿名組合の決算書(税法基準)を元に、会計と税務が相違する取引の仕訳を追加して、会計用(連結用)の決算書を作成する。

会計用の決算書は、別に外部に提出するものではないので、エクセル等でわざわざ作成する必要はなく、会計ソフトから出した試算表でも提出すればよいかと思います。

決算書が2つあるのは、会社法的にどうなんだということになりますので、あくまで連結用の会計データという位置付けとなります。(実務便宜上、決算書と呼んでいるだけです)

追加仕訳は、部門を追加し、部門別で入力するのがよいかと思います。

決算書の組替えをエクセルで作成するのは、面倒で間違いやすいように思います。

 

2,税務調整項目を匿名組合決算書に明記する

会計基準で作成した決算書を作成し、参考情報として、決算書に税務調整項目を記載して、組合員には税務調整後の損益を取り込んでもらう。

決算書のイメージとしては、以下のような感じになります。

 

(参考情報)

当期純利益       ○○

 税務調整項目

  事業税       ○○

  利息費用      ○○

  減価償却      ○○

税務調整後の当期純利益 ○○

 

決まった雛形等はないので、作成者によって、それぞれの様式があるように思います。

 

3,営業者に負担させる

GK-TKスキームでは、匿名組合と営業者を部門別で計上していることがほとんどかと思いますので、わざわざ部門を追加することなく、会計と税務の処理が相違する取引を営業者に計上します。

事務的にはわかりやすい方法ですが、ほとんどの場合、債務超過の決算書が出来上がってしまうので、会計的には、決算書が企業の状態を適切に表示していないのではないかと思います。

税務申告上は問題ないので、割り切ったやり方だと思います。

営業者(GK)の税務申告では、別表調整する必要があります。

 

匿名組合には会計基準や規則がないため、お好きな方法を選んでいただければよいのですが、事務的な便宜等を考慮すると、個人的なお勧めは、1がよいかなと思っていますが、2も実務でよく見かけます。