SPCの裁判事例(ビックカメラ事件)


不動産のオフバランスの会計処理について、事件となったのがビックカメラ事件というファンドの会計税務界隈では有名な裁判になります。(最高裁平成25719日判決)

この裁判で、税務当局が税会計処理基準という用語を創設し、会計と税務の判断基準が異なることがあることが明示されたように思われます。

 

裁判の概要は以下になります。

 

1,概要

・(原告・控訴人)ビックカメラ

・(被告・被控訴人・被上告人)税務署長

 

ビックカメラの行った不動産の流動化にかかる売却処理につき、証券取引等監視委員会の指導を受け、本件信託財産の譲渡を金融取引として取り扱う会計処理の訂正を行った。ビックカメラが、売却処理から金融処理に修正したことによって、譲渡についての売却益にかかる法人税を納付すべき税額が過大になったとして税務当局に更正を請求。税務署長が更正すべき理由がないと回答。その取り消しを求めてビックカメラが提訴。

 

2,論点

「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針(不動産流動化実務指針)」が公正処理基準(法人税法224項)に合致しているか。

 

3,判旨 控訴棄却

「法人税法は資産又は事業から生ずる収益に係る法律関係を基礎にそれが実質的に他の法人等がその収益として享受するものであると認められる場合を除き、当該収益が法律上帰属する主体に着目して、法人税の課税に係る同法の規定の適用の在り方を決するものとするところ、信託財産に帰せられる収入および支出について、受益者が特定している場合は、その受益者が当該信託財産を有するものとみなして、法人税法の規定を適用する旨を定めている。

法人が収益等の額の計算に当たって採用した会計処理基準が、法人税法224項の言う一般に公正妥当と認められる会計処理基準に該当するか否かについては、企業会計上の公正会計基準として有力なものであっても、当然に、その基準に該当するものではない。」

 

つまるところ、当該取引は、税法上、譲渡の実体を欠くものではなく、ビックカメラの行った売却処理は公正処理基準に合致しており、不動産流動化実務指針は公正処理基準に合致していないという判決となりました。

ビックカメラは、資産の譲渡による売却益を会計上取り消された上に、売却益にかかる税金を取られてしまったというダブルパンチを食らいました。

目論んでいた利益を出せなかった上に、税金だけ取られてしまうというのは、かなり悲惨ですね。

会計と税務は相違することがあるということを認識しなければならない教訓となっております。

 

資産流動化におけるオフバランスの会計上の取り扱いについては、「不動産におけるオフバランス(5%ルール)」というページに記載しておりますので、ご参考ください。