SPC(ファンド)の連結範囲


SPC(ファンド)の連結に係る会計上の考え方については、現行の連結財務諸表制度において、連結子会社の範囲の決定は、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関)を支配しているのかどうかという観点で判断する、いわゆる、支配力基準が原則的判定基準として採用されています。

(「連結財務諸表に関する会計基準」など)

 

連結財務諸表に関する会計基準第6項において、「「親会社」とは、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(以下、「意思決定機関」という。)を支配している企業をいい、「子会社」とは、当該他の企業をいう」と規定されており、他の企業の意思決定機関を支配している企業については、連結財務諸表に関する会計基準第7項において次のように規定されています。 

 「他の企業の意思決定機関を支配している企業」とは、次の企業をいう。ただし、財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる企業は、この限りではない。

(1)   他の企業の議決権の過半数を、自己の計算において所有している企業

(2)   他の企業の議決権の100分の40以上、100分の50以下を、自己の計算において所有している企業であって、かつ、次に掲げるいずれかの要件に該当する企業

      自己の計算において所有している議決権と、自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより、自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者(以下、「緊密な者」という。)及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者(以下、「同意している者」という。)が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めていること。

      役員、業務を執行する社員若しくは使用人である者、又はこれらであった者で自己が他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の企業の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること。

      他の企業の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。

      他の企業の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半について融資(債務の保証及び担保の提供を含む。)を行っていること。

      その他他の企業の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること。

(3)   自己の計算において所有している議決権と緊密な者及び同意している者が所有している議決権とを合わせた場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含む)に他の企業の議決権の過半数を占めている企業であって、かつ、上記(2)の②からまでのいずれかの要件に該当する企業」

 

  また、連結適用指針第13項において、「連結会計基準第7(2)④では、「他の企業の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているもの)の総額の過半について融資(債務の保証及び担保の提供を含む。以下同じ。)を行っていること(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)」とされています。

  これには、「他の企業の負債の部に計上されている資金調達額の総額の概ね過半について融資を行っていることにより、資金の関係を通じて財務の方針決定を支配している場合が該当する。なお、融資については、金融機関が通常の取引として行っている場合は該当しない。また、自己と緊密な者の行う融資を合わせて資金調達額の総額の概ね過半となる場合も該当することに留意する。」と規定されています。

   原則として、金融機関がSPCに貸付を行う限りでは、SPCは金融機関の子会社とはなりません。(連結財務諸  

   表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針13項)

 

子会社の定義に含まれる「組合その他これらに準ずる事業体」につき、その支配の判定基準をより明確にするために企業会計基準委員会から「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号)が公表されています。

実務対応報告第20号では、投資事業組合(投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合、民法上の任意組合、商法上の匿名組合として組成されるもの)に対しても、「会社と同様に、支配力基準を適用するが、投資事業組合の場合には、株式会社のように出資者が業務執行者を選任するのではなく、意思決定を行う出資者が業務執行の決定も直接行うことなどから、株式会社における議決権を想定している連結原則等を投資事業組合に対して適用する場合には、基本的には業務執行の権限を用いることによって、投資事業組合に対する支配力を判断することが適当である」としています。

 

このように、LPS、匿名組合等においても、連結の範囲の判定については、形式的な判定ではなく、支配力基準に基づき、実質的に判定されます。

例外として、オリジネーター(譲渡人)については、SPCは子会社に該当しないものと推定されます。(財務諸表等規則第8条7項)

ただし、オリジネーターについては、オフバランスの適用(特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針)がありますので、注意が必要になります。

オフバランスについては、「真正売買とオフバランス」というページに記載しておりますので、ご参照ください。

 

匿名組合の連結については、匿名組合事業の損益がほとんど匿名組合員に帰属する場合には、営業者を除き、匿名組合事業を連結することとされています。

このような場合、営業者が実質的に子会社であっても、通常、GKーTKスキームにおいては、営業者に事業の実態がないことがほとんどであるため、重要性が乏しいと考えられ、営業者を連結の範囲に含めなくてよいとされています。

 

SPCの連結範囲については、支配力基準による個別具体的な実質の判断になりますので、判断に迷われましたら、お問合せいただけると幸いです。