匿名組合において、税務上、争い(裁判)となった事例


匿名組合において、税務上、争いとなった事例で日本ガイダント事件という判決があります。

事件の概要は、税務当局が、日本国内で医療機器販売事業を営む日本法人(日本ガイダント社)を営業者、匿名組合員をオランダ法人とする匿名組合契約を任意組合契約と事実認定したうえで、その日本法人をオランダ法人の恒久的施設として、オランダ法人に対して法人税を課税したことによります。

匿名組合を使用して租税回避を行ったことの是非が争われた事件です。

 

判決は、契約当事者間で匿名組合契約が現実に履行されている以上、税負担の回避が匿名組合契約の組成目的であったとしても、税務上これを否認できるとする法的根拠はないと判示しました。

 

現行税法では、学説上も裁判例上も、明文の法律の根拠なしに租税回避行為の否認は認められないものと解されているところであり、租税回避行為が行われた場合に、法令上それを防止するような個別的な否認規定がない場合には、その租税回避行為について、税務上、否認することはできないと言われています。

「同族会社等の行為又は計算の否認」や「組織再編成に係る行為又は計算の否認」といった特定の分野を対象とした租税回避に対応する一般的な否認規定はあるものの、全ての分野・取引等に係る租税回避行為を包括的に対象とする一般的否認規定は存在していません。

そのため、租税回避として匿名組合を使用しているのは明白ではあるが、税務当局は、匿名組合を否認することはできなかったということになります。

 

当時は、日本とオランダの租税条約で、日本の営業者からオランダの匿名組合員に支払われる分配金は、日本で課税されないという合意があったため、匿名組合を使用した租税回避スキームが行われました。

現在では、このような租税条約はなくなり、匿名組合の分配金に対しては日本で源泉税が課されるようになり、匿名組合を使用した完全な租税回避をすることはできなくなりました

 

税務上、争いになる事例は、契約と実態が反するという事実認定によるものが多く、契約書があるから問題ないということにはならないということは注意する必要があります。