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デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)の会計・税務処理


デット・エクイティ・スワップとは、債務者側から見て、文字通り、債務を資本に変換することです。

デット・エクイティ・スワップは、企業再建手段として、よく使われます。

ファンドでは、再建というよりも債務超過の解消という手段で使われることがあります。

債務者にとっては、過剰債務を減らし財務体質を健全化できるというメリットがあります。

債権者にとっても、債権の全部又は一部を全面的に放棄しないで、その一部を株式に交換しておくことによって、自ら経営に関与することもでき、再建計画が成功し、株式の価値が上昇したときに、キャピタルゲインや配当収入を得ることが期待できるというメリットがあります。

 

デット・エクイティ・スワップの取引は、債権者にとっては、債権を現物出資するということになりますが、会計と税務の処理が異なりますので、債務者側の処理をそれぞれ以下に記載いたします。

 

1,会計

会社法上の払い込みを伴う新株発行に該当するため、債務の帳簿価額を資本に振り替えることになりますが、株式会社では、2分の1規制の対象となり、払込金額の2分の1を超えない範囲で資本準備金に計上することになります。

合同会社では、資本準備金の規定はないので、帳簿価額を全額その他資本剰余金にもできます。

 

仕訳例) 借入金 / 資本金

         / 資本準備金

 

2,税務

税務では現物出資は、企業再編税制の対象となっており、適格or非適格の判定をする必要があります。

適格は、完全支配関係がある法人間のデット・エクイティ・スワップとなる場合ぐらいであり、それ以外のほとんどが非適格になります。

適格の場合の税務処理は会計と同様になります。

非適格だと、現物出資では、資本金等の増加額は時価と規定されています。(法人税施行令811号)

税務上、頻繁に時価という言葉がでてきますが、実務上、一体いくらにしたらよいかという問題がよくあります。

一応、国税庁から文書が公開されていて、「債務者において負債から資産に振り替わる金額(被現物出資債権の時価)は、債務者および債権者の双方が合理的な再建計画に合意した回収可能額に基づき評価されることが合理的であり、これが法人税法施行令第8条第1項第1号における被現物出資法人が給付を受けた金銭以外の資産の価額(つまり時価=資本金等の増加金額)となる」としています。

つまりは、合理的に算定された回収可能額を時価として考えましょうということになります。

回収可能価額が算定できない場合には、実務上、法人税基本通達 9-1-13(下記参照)に市場有価証券等以外の株式の価額というものがあり、これを参考として、時価を算定することもあるようです。

デット・エクイティ・スワップをする場合には、企業の財務状態が悪いときにすることがほとんどなので、時価は簿価よりもだいぶ低くなることが一般的であり、債権者側では、譲渡損が発生するものと思われます。

債権者側では譲渡損になるため、節税をしようと思って、時価を低く設定しすぎてしまうと、合理的でない再建計画で過剰支援と認定されてしまい、寄付金となる可能性があります。

合理的な再建計画とは、法人税法基本通達942の注書きにおいて、「合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による債権管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取扱う。」と記載されています。

 

仕訳例) 借入金 / 資本金等

         / 債務消滅益

 

債務者側では、債務消滅益が発生することになりますが、再建中の会社に税金が生じるのは政策的に不都合なので、会社更生法、民事再生法その他それに準ずる一定の場合においては、期限切れの欠損金を債務消滅差益に充当することができます。

 

 

(参考)法人税基本通達 9-1-13

市場有価証券等以外の株式につき法第33条第2項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。

1) 売買実例のあるもの 当該事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額

2) 公開途上にある株式(金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式)で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下9-1-13において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。) 金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額

3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額

4)(1)から(3)までに該当しないもの 当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額