LPS(投資事業有限責任組合)に出資した者の会計処理と税務処理


LPSは法人格を持たず、納税主体とならないため、LPSへの出資者(GP、LP)は、自らの持分を直接、LPSから取り込んで税務申告する必要があります。

LPSに出資した組合員(GP、LP)のLPSからの取り込みは、税務では、以下の3つの方法が認められています。(通達14-1-2)

 

1,当該組合事業の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法

2,当該組合事業の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法

3,当該組合事業について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法

 

税務は、原則は1の方法としていますが、2と3も課税上の弊害がなく、継続して適用する限り認めています。

一方、会計は、上記3を原則としつつも、実態により、上記1,2とすることも認めています。(金融商品実務指針第132項、308項)

 

おすすめの方法は、上記1になります。

理由として、上記2と3は、税務上、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用ができなくなるおそれがあり、税務上、不利益を被る可能性があるためです。

特に、LPSについては、配当収入が主な収入となることもありますので、配当に対する源泉税について、所得税額の控除が適用できなくなる可能性があります。

監査人がたまに、上記3の処理にして欲しいと言ってくることがあるのですが、監査人が税務の責任をとってくれるのかと。。。

 

上記1の方法の会計処理は以下になります。

会計ソフトでは、LPSの取り込み部門を新たに作成して、部門別で計上することがよいかと思います。

 

①LPSから現金の分配があった時

預金   /   仮受金

 

②LPSから資産・負債・損益を取り込む時

資産   /   負債

費用   /   収益

仮受金 /

 

仮受金の金額は同額となり、LPSからの資産・負債・損益を取り込んだ時に仮受金はゼロとなります。

LPSから現金の分配があっても収益とならないことに注意してください。

LPSは法人格を持たないため、LPSから組合員への現金の分配は、経済実態として資金移動と同様となります。

そのため、LPSの分配金については、源泉税や消費税といったものは一切考慮する必要はありません

LPSの源泉税につていは、「LPS(投資事業有限責任組合)の源泉徴収」、LPSの消費税については、「投資事業有限責任組合(LPS)の消費税の取り扱い」のページにそれぞれ記載しておりますので、ご参照ください。

 

会計上、持分を取り込む時期(上記②の仕訳の計上時期)は、例えばLPSの計算期間が1月1日~12月31日の場合、12月31日付で仕訳する必要があります。

そのため、LPSの決算期と組合員の決算期が同じの場合には、自社の決算や税務申告のため、早めに組合の持分計算書をもらう必要がでてきます。

税務上は、当該組合事業に係る損益を毎年1回以上一定の時期において計算し、かつ、当該法人への個々の損益の帰属が当該損益発生後1年以内である場合には、帰属損益額は、当該組合事業の計算期間を基として計算し、当該計算期間の終了の日の属する当該法人の事業年度の益金の額又は損金の額に算入するものとしてよいとされています。(通達14-1-1の2)

そのため、LPSと自社の決算月が相違する場合には、非上場企業等で会計を考慮する必要がなければ、組合の持分を取り込むのに、時間的な余裕ができます。