【※2024年9月13日に新リース会計基準が公表され(2027年4月1日以後の期首から適用開始)、会計上、借手のオペレーティングリースは一部を除き、廃止されます。中小企業は税務に従って会計処理されることから、記事は残しております。税務に改正等があれば、更新したいと思います。】
リースの特殊な取引として、セール・アンド・リースバック取引があります。
セール・アンド・リースバック取引とは、借手が所有する資産を貸手に売却して、その物件についてリースするという取引になります。
リース取引なので、ファイナンスリースかオペレーティングリースの判定をすることになるのですが、ファイナンスリースに該当すると会計と税務の考えが全く異なるため、実務上やっかいな取引となります。
セール・アンド・リースバック取引の会計処理について、会計は、売買取引+金融取引という考えで処理方法は1つなのに対し、税務は、売買取引or金融取引という考えで2通りの処理があることになります。
具体的にセール・アンド・リースバック取引の会計と税務の処理の違いを以下に示します。(借手の処理)
1,会計処理
①資産売却時(売却益が生じた場合)
預金 / 資産
/ 長期前受収益
②リース時
リース資産 / リース債務(リース料総額-利息相当額)
③リース料支払い時
リース債務 / 預金
支払利息 /
※会計の考え方のイメージは下記参考図参照。
2,税務処理
(1)売買取引と判定された場合(売却益が生じた場合)
①資産売却時
預金 / 資産
/ 資産売却益
②リース時
リース資産 / リース債務(リース料総額)
③リース料支払い時
リース債務 / 預金
※仕訳は、消費税について考慮しておりませんので、消費税の処理については、「セール・アンド・リースバック取引の消費税の取り扱い」のページをご参照ください。
(2)金融取引と判定された場合
預金 / 借入金
売買取引とみなされないので、資産を担保とした借入となります。
金融取引かどうかの判定については、法人税基本通達12の5-2-1(下記参考参照)に記載されています。
上記の仕訳でわかるように、
会計では、売却益は、一時の収益とならず、長期前受収益として、減価償却費と同様の形で減価償却費のマイナスとして償却されていきます。
税務では、売買処理と判定されれば、売却時に売却益として認識されます。
一方で、資産を担保とした借入として金融取引と判定されると、借入金と同じ処理となります。
借入金となるため、当然に消費税は発生しません。
税務では、売買取引と判定されれば、消費税がかかり、金融取引と判定されると、消費税がかからなくなり、判定の相違により、消費税の問題が発生します。
会計上では、売却益は繰延処理され、税務では、売却益となるため、税会不一致がおこることになります。
以前、リース会社のお偉いさまにこのことを伺ってみたことがあるのですが、会計の処理を税務調査で指摘されたということがあったそうで、リース会社としては、売却益が生じた場合には、別表調整することを勧めているとのことでした。
では、売却損のときは、損金算入するのかと聞いてみたら、それは勧めていないという、極めて実務的な回答でした。
公正妥当な処理とは一体。。。
ちなみに、会計ではファイナンスリースについて、リース料には利息が含まれるという考えをとる一方で、税務にはリース料には利息を含むという考えがないため、税会不一致がおこると思われますが、税務は、利息として処理する会計処理について、通達によって容認しています。
したがって、会計の処理をすると利息に対して消費税が課されるという奇妙なことになります。
税務は、会計の考え一部を容認してみたり、どっちつかずとなっており、会計の方が、理屈としては、首尾一貫していると思います。
個人的には、会計の処理を税務が認めてくれればよいと思うのですが。
(参考)会計のセール・アンド・リースバック取引のイメージ図
(参考)法人税基本通達12の5-2-1(金融取引の判定)
12の5-2-1 法第64条の2第2項《金銭の貸借とされるリース取引》に規定する「一連の取引」が同項に規定する「実質的に金銭の貸借であると認められるとき」に該当するかどうかは、取引当事者の意図、その資産の内容等から、その資産を担保とする金融取引を行うことを目的とするものであるかどうかにより判定する。したがって、例えば、次に掲げるようなものは、これに該当しないものとする。(平10年課法2-15「4」により追加、平14年課法2-1「三十二」、平15年課法2-7「四十七」、平19年課法2-17「二十八」により改正)
(1) 譲渡人が資産を購入し、当該資産をリース契約(法第64条の2第3項《リース取引に係る所得の金額の計算》に規定するリース取引に係る契約をいう。以下12の5-2-2において同じ。)により賃借するために譲受人に譲渡する場合において、譲渡人が譲受人に代わり資産を購入することに次に掲げるような相当な理由があり、かつ、当該資産につき、立替金、仮払金等の仮勘定で経理し、譲渡人の購入価額により譲受人に譲渡するもの
イ 多種類の資産を導入する必要があるため、譲渡人において当該資産を購入した方が事務の効率化が図られること
ロ 輸入機器のように通関事務等に専門的知識が必要とされること
ハ 既往の取引状況に照らし、譲渡人が資産を購入した方が安く購入できること
(2) 法人が事業の用に供している資産について、当該資産の管理事務の省力化等のために行われるもの