不特法は、不動産事業の発展と事業参加者の利益の保護を目的としています。
そもそも、この法律ができたのは、経営基盤の脆弱な不動産会社が運営し、投下資本の回収ができない事例や、投資家への情報開示が不十分であり、分配される収益が他の事業に流出された事例などがあり、投資家の自己責任において、投資できる最低限のルールのとして制定されたという経緯があります。
最近では、ネットで気軽に不動産小口商品を購入できる環境があるため、改正も都度行われてきました。
当該法律の規制は、不特定多数の投資家から財産を預かり、不動産取引による運用を行って得られた収益を分配するという行為を対象としています。
具体的な形態には、任意組合型と匿名組合型があり、一般的には匿名組合型が多いかと思いますが、相続対策の商品として、長期のものは任意組合型になることもあります。
ちなみに、土地を賃貸して、その上に太陽光パネルを設置し、発電事業を行い、投資家に分配することいついては、太陽光パネルは動産ということで、不特法の契約には該当しないことになるようです。
不特法での、規制は多岐に渡りますが、その内、会計税務の規制を以下に記載いたします。
1,不特法の事業者の許可を受けるのに、財産的基礎の確認のため、直前3年のB/S、P/Lについて、会計監査が必要になります(小規模事業は不要)。(施行規則8条2項2号)
弊事務所でも、不特法の監査をやっており、毎年多くのご相談をいただいておりますので、ご不明点等があればお問合せください。
不特法の監査の概要については、「不動産特定共同事業法(不特法)と会計監査」のページに記載しておりますので、ご参照ください。
2,事業者は、定期に財産の管理状況について、事業参加者に報告しなければなりません。(法28条2項、施行規則50条)
報告書に決まった様式はないですが、一般的には、当該事業のB/S、P/Lを添付することになります。
たまに、エクセルなどで管理されていて、帳簿(会計システム)と数値が相違する報告書があるのですが、帳簿と同じ数値となるように作成することが必要です。
定期とは、組合契約などで自由に定めることはできますが、税務(納税)を考慮すると1年を超えないことが必要になります。
当該報告書に監査証明をつけることもできますが、この場合、会計監査は任意になります。
報告について、違反した場合には、業務停止命令の対象になります。(法35条1項2号)
3,財産は、投資家保護の観点から、自己の固有の資産と分別して管理しなければなりません。(法27条、施行規則49条)
帳簿の管理としては、会計システム上、部門別で計上されている場合が多いように思います。
エクセル等での管理だと、上記2に記載したように、帳簿と数値が相違してしまう場合がありますので、おすすめはしません。
預金については、事例ごとに実質的な判断とはなるようですが、事業毎に専用の口座を作成する必要があるようです。(平成25年4月パブコメ回答No35~38)
4,不特法の事業者は、事業報告書を毎事業年度ごとに、毎事業年度経過後3カ月以内に、国交省or都道府県に監査証明付きの事業報告書を提出しなければなりません。(法33条、施行規則57条)
上場企業等で有価証券報告書の計算書類について、すでに監査証明がある場合には、代替することが可能です。(規則別記載様式10号記載要領5項⑲、規則別記載様式11号記載要領⑨)
違反した場合には、業務停止命令の対象とはなっていなく、50万円以下の罰金となっています。(法83条8号)
監査を受けるより、罰金の方が安いので、監査受けなくていいじゃないと思われるかもしれませんが、提出先の指導によって、監査を受けなさいと言われることが実際にありました。
5,自己の不動産を不特法事業(組合)に売却する場合には、俗にいう5%ルールに抵触してしまう可能性があり、金融庁等などから指導を受け、会計処理の訂正を求められることがあるため、注意が必要になります。
(5%ルールについては、「不動産におけるオフバランス(5%ルール)」のページに記載しておりますので、ご参照ください)
6、不特法では、金融商品取引法による損失補填の禁止が準用されています。(法第21条の2)
損失補填とは、投資家に損失が発生した場合に、事業者が穴埋めする行為のことをいいますが、予定されていた利益が得られなかった場合に利益を追加することも含まれますので、注意が必要になります。